はじめに
令和6年第1回北斗市議会定例会の開会に当たり、新年度の教育委員会所管に関する執行方針について申し上げ、議員各位並びに市民の皆さまのご理解とご協力をお願いする次第であります。
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置づけられ、本年1月には3年越しで「23歳の大同窓会」を開催するなど、今まで制限されてきた様々な行事が通常どおり行われるようになりました。
また、昨年の夏は、記録的な猛暑が続き、子どもたちの健康も心配され、臨時休校などの熱中症対策を講じたところですが、このような中で、北斗市では初めてとなる全国高等学校総合体育大会相撲競技大会が開催され、関係各位のご協力のもと、市内高校生が主体となった運営により無事に終えることができました。
さて、本市の教育の基本的な考え方は、従来同様、持続可能な社会の担い手として新しい時代を生き抜く力を育む教育の推進であり、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念を基本とし、子どもたちがこれからの社会で活躍できるよう、一人ひとりの可能性を引き出し、引き続き人材育成に努めてまいります。
学校教育の推進
1 社会で活躍する力を育む教育活動の推進
これまでの教育においては、子どもたちがどれだけの知識を得るかが大きな目的でありましたが、これからの時代においては、子どもたちがコミュニケーションを取り、様々な考え方を持ち、新たな発見を得るなど、学んだ知識をどのように活用していくのかということが求められています。
GIGAスクール構想により整備したタブレット端末については、授業内のほか、臨時休校時や学校間での交流学習、不登校児童生徒へのオンライン授業など、幅広く活用されている状況にありますが、子どもたち自らが活用しているという意識が希薄であるため、その効果・検証を行い、更なる有効活用に努めてまいります。
道徳教育については、自尊意識や自己肯定感、自らのコミュニケーション能力を高め、人を思いやる気持ちを育てていくことが必要です。これらのことは、授業内だけではなく、自らの目で見ること、体験することで身につくものであり、保護者、教職員、そして私たちの行動すべてが子どもたちの道徳心に与える影響は大きいものであることを理解しなければならないと考えます。
体験活動については、成長過程における非認知能力を高めるうえで非常に重要であり、教科横断的な授業との組み合わせにより探究的学習につながるものと捉えていますが、限られた授業内だけでは十分と言えないことから、社会教育事業や地域の行事など、各家庭による取組みが必要であり、保護者や地域の皆さまのご協力をお願い申し上げます。
2 誰一人取り残さない教育の推進
近年は、教育分野においても人工知能(AI)の活用が加速し始めており、このような時代の中、子どもたちは知識だけではなく創造力や発想力が必要であり、一人ひとりの子どもたちの個性や能力を伸ばしていくため、個別最適な指導の充実を図ってまいります。
増加傾向にある不登校児童生徒については、各学校における不登校対策マニュアルにより対応しているところですが、不登校となる前の対策が重要であり、それぞれの家庭と学校が協力し合い、子どもたちとのコミュニケーションを図ることが大切であると考えます。
また、このことがいじめの未然防止・早期発見につながるものであり、子どもたちとの教育相談を定期的に実施するほか、安心して学校生活を送れるよう校内支援センターの設置及び充実に努めてまいります。
さらに、不登校となってしまった児童生徒については、学習保障の観点からも個々に合った学習機会の提供に努める必要があり、オンライン授業、教育支援センター、特認校制度の活用のほか、関係機関との情報共有など、幅広い選択肢を提供してまいります。
教職員の働き方改革については、学校部活動の地域移行に関しての推進協議会を立ち上げ、協議会における議論を重ね、段階的な移行を進めてまいります。
また、小学校においては教科担任制を徐々に進めている状況にありますが、今まで以上に各小中学校における創意工夫を施すとともに、土曜授業やクラウドネットワークの有効活用など、教職員の新たな発想を取り入れながら業務効率の向上を図ってまいります。
3 教育環境の整備の推進
地球温暖化が原因とされる気候変動の影響により異常気象が頻発しており、本市においては、昨年の夏に34.5度という過去最高気温を記録したところです。このような中、児童生徒の健康を守り、安全・安心な学習環境を早急に整えるため、令和7年度までに市内すべての小中学校に空調設備を設置する考えであります。
学校現場におけるジェンダー平等に関する取組みについては、新年度より、市内中学校の制服をブレザー型に統一することとしています。統一制服は、全ての生徒がスラックスを選択できることから冬季の防寒対策や通学時の安全対策にもつながるものであり、また、妊娠・出産から育児、子育てまで切れ目のない施策を展開する中での一つの方策として、保護者の経済的負担の軽減を図る観点から、当分の間、基本部分の全額を助成します。併せて、校則の見直しを進めているところであり、子どもたちの意見も取入れた新しい校則については、新年度から開始してまいります。
本市の発展に資する有用な人材の育成を図るとともに、市内への回帰を促進するための奨学金の貸付制度については、新年度より専修学校の修業年限を見直し、より適正で利用しやすい制度とする考えであります。
学校施設については、ゼロカーボン推進に資する照明器具更新のほか、トイレの洋式化を計画的に行うなど、施設の更なる利便性向上を図ってまいります。
防災教育については、自助、共助を中心とした防災意識の向上、救命方法、一日防災教室などを積極的に実施し、児童生徒、教職員の防災意識のさらなる向上に引き続き努めてまいります。
また、本市の津波浸水想定区域の拡大による対象区域内の学校においては、詳細な避難計画を現在策定しているところですが、通学時間帯における対応など、児童生徒への適切な指導を引き続き行ってまいります。
学校の統廃合については、全国的な少子高齢化による人口減少を鑑みると喫緊の課題でありますが、小規模校の特性を生かした特認校制度を利用している児童生徒が少なくないなど難しい課題であることから、学校が果たす地域での役割を見極め、保護者の皆さまや地域の方々からの声に耳を傾けながら、研究・検討を進めてまいります。
学校給食共同調理場については、調理場の設備や調理機器の老朽化が進んでいることから、予防保全管理を適切に行い、引き続き計画的な施設の改修に努めてまいります。
また、物価高騰等による影響が顕著に現れており、受益者負担適正化の観点や学校給食の質の確保などからも、適正な学校給食費の額を設定するため、新年度より額の引き上げを実施します。しかしながら、昨今の景気動向などを鑑み、当分の間、市内の児童生徒については、従前の学校給食費の額を維持してまいります。
社会教育の推進
1 地域の教育力向上と生涯学習
生涯学習推進の中心的役割を担う社会教育については、子どもから高齢者まで、市民の皆さまが生涯にわたり明るく元気な生活を送るために、自由に学べる環境づくりと多様な学習機会の提供などにより、市民一人ひとりの学習意欲を高め、自発的な学習活動を促進することが重要です。
本市は、スポーツ、音楽活動が盛んなまちとして、毎年、児童生徒が全道、全国大会に出場し優秀な成績を収めていますが、『音楽のまち・ほくと』に関わる取組みを含め、市民の皆さまへの広がりをより一層高めるための活動を進めてまいります。
高齢者大学については、個々のニーズが多様であり入学者数の減少がみられますが、デジタル時代に対応したカリキュラムやその取組みについての更なる周知を図るため、オープンキャンパスを増やすなどにより、門戸を広げ、気軽に学べる体制づくりに努めてまいります。
また、婚活事業については、市内関係機関との連携、及び庁内横断的な取組みを進め、結婚活動を全面に掲げることなく、出会いの場の創出を念頭に置いた事業の実施に取り組んでまいります。
青少年の育成については、成人年齢が18歳に引き下げられたことにより、高等学校在学中に成人となるため、学校教育の段階からの日常的な主権者教育を進めてまいります。
また、ふるさとを愛し、本市に住み続けたいという思いの醸成を図るため、コミュニティスクールによる地域との交流のほか、ほくと学ジュニア検定など、ふるさとをより理解していただける取組みを継続してまいります。
さらに、青少年育成大会や子ども議会など、子どもたちが本市について考え、発表し、議論を重ね、自らが市政に参加しているという経験を積み上げることが、ふるさとを愛し、大人としての自覚を持つことに繋がるものと考えています。
図書館については、令和3年度からの読書の通帳事業が小学生を中心に好評であり、また、幼児や高齢者にも浸透していることから、更なる工夫を図りながら引き続き事業を実施してまいります。
また、図書館まつり、夜の図書館、読み聞かせ事業などについては、従来の形に音楽や仮装を組み合わせることにより、参加者数の増加に繋がったところです。
図書ボランティアジュニアサポーターについても、引き続き増加傾向にあり、中学生が自ら読み聞かせを実施するなど積極的な参画も見られ、利用者目線による図書館運営に引き続き努めてまいります。
2 市民が主体的にかかわる芸術・文化の振興とスポーツ活動の推進
本市では、令和2年度より『音楽のまち・ほくと』を掲げたまちづくりを進めており、学校運営協議会による地域向けコンサートの実施、一般団体による芸能と吹奏楽の合作による企画など、令和4年度から配置した指導主事を中心に、市民の皆さまが気軽に音楽に親しむ機会を数多く提供してきたところです。今後も、市民の皆さまのニーズに対応した事業を引き続き進めてまいります。
文化財については、常設展示に加え、特別展示として縄文展、松前藩戸切地陣屋跡展、戦争と平和展などを実施したところであり、特に、縄文展は、本市の文化財のほか、全道各地からの石器、土器の展示も行い、大変好評でありました。今後も、市内のみならず他の地域との連携を図り、皆さまに喜ばれる事業を実施してまいります。
スポーツ活動については、生涯を健康で生きがいのある生活を送るうえで必要な活動であり、総合体育館をはじめとする体育館のほか、令和5年度より指定管理者による管理とした市民プールなどの施設を有効活用し、市民ニーズに沿った事業展開を進めてまいります。特に、市民プールについては、民間ノウハウを活用し、障がい者が気軽に参加できる教室のほか、障がい者と健常者が一緒に参加できる大会を支援、運営してまいります。
また、陸上競技場やフットボール場については、スポーツ合宿のほか、各種大会の開催により利用者が増加傾向にあり、地域の子どもたちと一流選手との交流を一層深める取組みを進めてまいります。
施設改修等については、総合文化センターの空調設備を更新するほか、浜分体育センターのアリーナ床の改修などを実施してまいります。
むすびに
近年の猛暑や豪雨などの異常気象は、地球温暖化が原因のひとつと考えられ、気温の上昇、大雨の頻度の増加のほか、農作物の品質低下、動植物の分布域の変化、熱中症リスクの増加など、環境及び経済に大きな影響を与えています。
このような異常気象は、偶発的なものではなく、人間が科学の進歩の中で行われてきた活動が、地球の気候を温暖化させた、ということに「疑う余地がない」と国際連合は発表しています。
超情報化時代を迎え、科学の進歩はさらに加速されます。いま、私たちは、大昔の時代に戻ることはできず、現状を受入れなければならないと考えますが、未来のある子どもたちのため、一人ひとり何ができるのか、何をしなければいけないのかを考え、行動することが大事であるものと考えます。
北斗市が、今後ますます発展していくためにも、子どもたちが健やかに育っていくこと、そして市民の皆さまが健康で生きがいを持って暮らしていけることを願い、教育の充実に誠心誠意努力してまいる所存であります。