北海道指定有形文化財
有形文化財 大乗妙典一千部供養塔
所 在 地:北斗市茂辺地694
所 有 者:宗教法人矢不来天満宮 代表役員宮司 中村卓司
指定面積:57,500u
指定年月日:平成22年3月16日
この供養塔は、新井田五郎左衛門広友の妻が施主となり、羽黒山修験道の僧侶是空が願主となって、衆生
を迷いから悟りの境地に導いてくれるという教えを記した仏教経典である「大乗妙典」を一千回、読誦した
ときの記念に建てた石碑である。供養塔には、先祖供養、海難供養のほか、天下泰平、国家安全などの願文
が刻まれ、当時の人々の宗教観を伝える貴重なものである。
供養塔が所在する場所は、茂辺地川を挟み中世の茂別館主として「下国守護職」に任ぜられた下国安東氏
の居館であった国指定史跡の茂別館跡と対置し、地元では「観音沢」と言い伝えられる下国安東氏ゆかりの
慈眼寺の旧境内にあたる。その後、茂別館の館神である矢不来天満宮が遷宮した場所でもあり、函館山や函
館湾を一望できる眺望の良い景観地である。
供養塔建立者の夫、新井田五郎左衛門広友は、松前藩の寺社奉行の要職を務めた人物であり、『福山秘府』
享保14年の記事では家老を補佐する「用人」に任ぜられている。松前藩成立後、下国安東家は歴代の家老職
を務めた家柄であり、新井田五郎左衛門広友は、茂辺地を本拠とした下国安東氏との関係がうかがわれる。
中世・近世を通じ、茂辺地が重要な位置を占めていたものと考えられ、供養塔が建立される場所選定にも大
きな影響を与えていたことが推察される。
供養塔は、このような歴史的背景の中で建立されたものであり、北海道の歴史を研究する上で貴重な資料で
ある。
(表面) 天下泰平 六親眷属 有縁無縁 漂波亡霊
奉 讀 誦 大 乗 妙 典 一 千 部 供 養 塔
國家安全 七世父母 三界萬靈 等為菩提
(右側面) 若我滅度後 能奉持此經 斯人福無量
如上之所説 是則為此足 一切諸供養
以舎利起塔 七寶而荘厳 表刹甚高廣
(左側面) 漸少至梵天 寶鈴千万億 風動出妙音
又於無量刧 而供養此塔 華香諸瓔珞
天衣衆妓樂 燃香油穂燈 周匝常照明
(裏面) 羽州羽黒山台峯木食律之沙門願主是空
干 時 享 保 十 六 辛 亥 天 三 月 吉 祥 日
讀經壹部之施主 新井田五郎左衛門内